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「楽譜を読む力」について

  • 執筆者の写真: 山田亮
    山田亮
  • 5月30日
  • 読了時間: 5分



Daily music 講師の柴垣健一です。クラシックを主に担当しています。

「クラシックピアノ」を楽しむ上で大切なことはたくさんありますが、その中でも「楽譜を読む力」はとても重要なものの一つです。

この記事では、なぜクラシックピアノにおいて「楽譜を読む」ことが重要なのか、その理由や背景、そしてその力がついてくると何が変わってくるのかを、あらためて整理してみたいと思います。




「楽譜」という発明


そもそも今、私たちが使っている「楽譜」というツールは西洋のクラシック音楽の文化から生まれてきたものです。

クラシック音楽は「音楽を楽譜に書き記す」ことで、音楽をその場限りのものだった音楽を、誰でも、どこでも、いつでも「読む」「演奏する」ことができるものにしました。

つまり、作品が「楽譜」という形で場所や時間をこえて共有されるものになったということです。

J.S.バッハの作品をベートーヴェンが読んだり、ドビュッシーの楽譜を坂本龍一が読んだりできたのも、「楽譜」があったからこそです。




クラシック音楽における「楽譜」


クラシック音楽はそうした「音楽を楽譜で読み」「音楽を楽譜に書き記す」という文化の上に発展してきました。さらにいうならば「楽譜」があったからこそ、クラシック音楽はこれだけ豊かに発展してきた、という側面も多分にあると思います。そのくらい「楽譜」というものはクラシック音楽において重要なものです。

また、クラシックの作曲家たちは、はじめは音程やリズムといった基本的な情報だけを書き記していましたが、時代が進むにつれて、強弱やフレージング、アーティキュレーションなど様々な情報を楽譜に書き込むようになりました。それにつれて楽譜はより複雑で豊かな情報を持つようになりました。

こうした文化的な背景を考えても、クラシック音楽をより深く味わい、演奏するためには「楽譜を読む力」がとても大切だと思います。




ジャズやポップスとの比較


ほかのジャンルと比較してみるとどうでしょうか。

たとえばポップスやジャズの世界では、「リードシート(メロディとコードが書かれた楽譜)」という楽譜を使うことが多いです。このリードシートは、演奏者が自分でアレンジする前提で書かれた楽譜です。コード譜に「C」と書かれていれば、それを見て演奏者が自由に解釈し、伴奏をつけていきます。

一方、クラシック音楽では、その「C」というコードに相当する部分が、非常に細かく指定されていることがほとんどです。

たとえば、

・左手はドソミソというアルペジオで、どう動くか

・右手の内声にはどの音があって、どのタイミングでどう響くか

・その部分の強弱はどうか、フレーズの方向感はどうか

といったことが全て書かれています。

つまり、クラシック音楽は他のジャンルと比べても、作曲者が楽譜に記す情報の「細かさ」や「量」が多いと言えます。このことからも、クラシック音楽では「楽譜を読む力」が特に大切だということがわかると思います。




大切なのは積み重ね


ここまで、クラシックを学ぶ上でなぜ「楽譜を読む力」が大切なのかというお話をしてきました。

とはいえ楽譜というものは、見慣れない人にとってはとても難解なものでもあります。

慣れるまでは一音読むだけでも大変ですし、ましてクラシックピアノの楽譜というのはメロディだけでなく伴奏の音まで全て音符で書いてあり、読むのが本当に大変です。

それをスムーズに読むためには、やはり「たくさん読んで弾く」という積み重ねがどうしても必要になってきます。

楽譜というのはある種の「言語」なので、外国語を習得するためにたくさん読んで聴いて話して、ということをするのと同じように、「読んで弾いて聴いて」といったことを繰り返すことで、だんだんと自然に、無意識に読めるようになっていきます。




「楽譜を読む力」は何を変えるのか


では最後に、そんな大変な「楽譜を読む力」がつくとどんな良いことがあるのか、ということを大きく2つ挙げてみたいと思います。


まず一つ目は「練習の効率が上がる」ということです。

例えば楽譜をスムーズに読めるようになると、曲の途中から部分的に練習をしたり、パートを抜き出して音を確認したりといったことがしやすくなります。

また、「自分が今どこを弾いているのか」や「どこに課題があるのか」といったことも、楽譜を読む力がつけばつくほど、より詳細に、ピンポイントに振り返ることができます。

これらのことを通して、曲の構造や自分の演奏について理解が深まり、結果として練習の効率が大きく上がってくると思います。


二つ目は「譜読みが楽しくなる」ということです。これが私としては最も強調したいことです。

「読んで弾いてみる」というプロセスがスムーズになっていけばいくほど、譜読みは楽しくなっていきます。

私自身、クラシックピアノに取り組む中で「読んで弾いてみる」「読んで考えて、演奏をより良くしていく」というプロセスに大きな喜びを感じています。

クラシックピアノの楽しみ方は人それぞれあると思いますが、この「読んで弾いてみる」こと、それもベートーヴェンやモーツァルトやショパンやブラームスなどの偉大な作曲家の残した作品を「読んで弾いてみる」ことができるということは、本当に何にも変え難い喜びだと思っています。

もちろん、先述したように楽譜を読むためにはたくさんの積み重ねが必要ですが、その積み重ねの先にはほんっっとうに楽しいことが待っている!と、声を大にして言いたいです。




まとめ


今回はクラシックピアノを学ぶ上で「楽譜を読む力」がなぜ大切なのか、について書いてみました。

楽譜を読むことは慣れるまで本当に大変です。ですがそれが身についていくにつれ、クラシックピアノは段違いに楽しくなるということは断言します!

千里の道も一歩からというような気持ちで、少しずつでも「楽譜」に向き合ってみてはいかがでしょうか。

 
 
 

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