Daily music講師の柴垣健一です。クラシックを主に担当しています。
楽器の演奏を楽しむ上で大切なことのひとつに「曲選び」があると思います。好きになれない曲にずっと取り組み続けるのは退屈ですし、好きなだからといって難しすぎる曲の場合には途中で諦めてしまうこともあるかもしれません。レッスンをする立場としては、なるべくその人に合った曲を選んで、楽しくピアノを弾いて欲しいなと思います。
今回は「クラシックの曲に取り組むなら、まずこの曲はどうでしょうか?」と日頃おすすめしている曲をいくつか紹介したいと思います。
「合った曲」を選ぶこと
「合った曲」を選ぶ上で考慮することはいろいろあると思います。その中でも「簡単すぎず、難しすぎない」ことは、大切なことの一つではないでしょうか。そして「簡単すぎず、難しすぎない」曲を選ぶためには、まずその曲の特徴や難しさをある程度知っておくことが必要です。
今回は3曲をピックアップしていますが、それぞれの曲の特徴と併せて
《難しいポイント》
《味わえること》
を独断と偏見で挙げてみました。ただ、これらは人によっても、取り組み方によっても、大きく変わるものなので、あくまで曲を選ぶ際の参考程度に見ていただければと思います。
おすすめその①
J.S.バッハ作曲 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1番より プレリュード
4/4拍子 ハ長調(シャープフラット無し)
有名なあのバッハが、息子の教育目的で書いたとされる曲です。
パッと楽譜を見ると、「音が多い!」と思われる方もいるかもしれません。確かに、この曲は最初から最後までずっと16分音符が続いているので、楽譜だけ見ると音が多くて難しそうに感じるかもしれません。
ただ実はこの曲、演奏するのは楽譜で見るほど難しくないです(多分)。というのも、この曲は「分散和音(アルペジオ)」と呼ばれる奏法が一貫して繰り返されているので、必要なテクニックはその「分散和音」の弾き方と、そのパターンの習得くらいです。
なので、弾き慣れてしまえば「指の配置と響きの関係」「ピアノの美しい響かせ方」「ハーモニーの移ろい」などといったことを落ち着いて味わえる曲なのではと思います。
《難しいポイント》
・和音ごとに手や指のポジションを覚えること
・黒鍵に慣れること
・一定のテンポで弾くこと
《味わえること》
・音域ごとの、きれいな響かせ方
・たくさんの和音のパターン
・「和音の響き」の味わい方
おすすめその②
サティ作曲 ジムノペディ第1番
3/4拍子 ニ長調(シャープ2つ)
フランスの作曲家サティの作品です。有名なドビュッシーやラヴェルと同じ国で、ほぼ同時代を生きた作曲家です。サティの作品の中でもこのジムノペディ第1番は群を抜いて有名なので、どこかで耳にしたことがあるかと思います。
長七和音(メジャーセブンス)という和音のフワッとした響きの中で、よく調和した美しいメロディがたゆたいますが、時折混ざるどこか違和感のある響きが独特の雰囲気を醸します。
《難しいポイント》
・左手の跳躍
・音量のバランスを整えること
・右手の3.4.5の指でメロディを弾きながら、1の指で伴奏の音も弾くこと
《味わえること》
・伴奏の響きの中でメロディをきれいに響かせること
・不協和に聴こえる響きを、意図を持って表現すること
おすすめその③
ペツォールト作曲 メヌエット ト長調
3/4拍子 ト長調(シャープ1つ)
この曲はクラシックの導入の曲として昔から定番の曲です。(ヴァイオリンやチェロのメジャーな教本にも入っていますね!)かつてはJ.S.バッハが書いた作品として認知されていましたが、近年の研究ではクリスティアン・ペツォールトというバッハと同時代のドイツの作曲家が書いたとされています。
「メヌエット」というのは宮廷で踊られていたダンスの一種です。なのでこの曲も常にメロディに動きがあり、弾きごたえのある曲です。音を正しく弾けるようになってきたら、体でリズムを感じながら、メロディの動きで遊ぶような感覚を持てると、楽しく演奏できるのではないでしょうか。
《難しいポイント》
・よく動く2つのパート(右手と左手)を同時に弾き進めること
・メヌエットのリズム感
《味わえること》
・曲の持つリズムに乗って演奏する感覚
・メロディに動きや流れを作ること
まとめ
クラシックには良い曲がたくさんありますが、それぞれの曲に個性や特徴があり、演奏する上で必要なテクニックや感覚、作品としての魅力も様々です。
今回挙げたものはあくまでその一例ですが、少しでもよい曲選びの助けになれば嬉しいです。
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