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子供にとって難しい『楽譜を読んで弾く』ことを克服する方法




Daily Music講師の柴垣です。クラシックを主に担当しています。


クラシックピアノを学ぶ上で避けて通れないことの1つに「楽譜」というものがあります。初めてピアノを学ぶ人、特に子供にとって、五線の上に並んだ見慣れない記号の意味を読み取り、それを音にするということは高いハードルになりがちです。

今回は「楽譜を読んで弾ける」ようになるために、子供にレッスンをする際に実際に取り入れている方法をご紹介します。




「楽譜を読んで弾く」とはどういうことか


「楽譜を読んで弾く」というプロセスを行うためには、実は以下のようにたくさんの情報を処理する必要があります。

①音符(記号)

②音名(名前)

③鍵盤(弾く場所)


具体的なプロセスに当てはめると、このようになります。


ある音符を見て(①)

その音符の名前をドだと認識して(②)

ドの鍵盤を探す(③)


一音読んで弾くだけでも情報を2段階も処理する必要があり、結構大変なことだと感じます(これを実際には何音も続けてやらなければならない‥!)。このように改めて考えてみると、子どもにとってこの「楽譜を読んで弾く」が、高いハードルになることも頷けます。

ではこのハードルを下げるために、一連のプロセスを分解して考えてみましょう。



「楽譜を読んで弾く」を分解する


「楽譜を読んで弾く」というプロセスには、2段階の情報の変換が必要でした。

①音符

②音名

③鍵盤


この「2段階」が大変なわけですが、以下のようにそれぞれの段階を分けて考えてみるとどうでしょうか。


①音符

②音名


②音名

③鍵盤


「楽譜を読んで弾く」という2段階の情報処理に難しさを感じているお子さんに対しては、上記のように、

「①音符→②音名(読む)」

「②音名→③鍵盤(探す)」

とプロセスを分けて指導しています。具体的には

「楽譜に音名を書く時間」

「音名を見て演奏する時間」

を別でとって、それぞれのことに集中をしてもらいます。

二つの処理を続けてやるのではなく、それぞれ別で集中してできるのであれば、だいぶハードルが下がるのではないでしょうか。



この指導法の良いところ


「読んで弾く」プロセスを「読む」と「弾く」に分けて指導することのメリットは例えば以下のようなものがあります。

  • プロセスを細かくすることで、どこでつまづいているのか気づきやすい。

  • 難易度が下がるため、成功体験を積みやすい。

「読んで弾く」を続けてやってしまうと、その子供が「読む」ことが苦手なのか「弾く(鍵盤を探す)」ことが苦手なのか、わかりにくくなってしまいますが、それぞれを分けて行うことでどちらが苦手なのか気づきやすくなります。

また、あまりにも高いハードルというのは子供にとって苦手意識を植え付けることに繋がりかねません。まずはハードルを下げて「できること」を増やしていくような指導ができることも、この指導アプローチの良いところだと思います。



考慮した方が良いこと


ただ、実はこの指導の方法には落とし穴といいますか、音楽を学んでいく上で抜け落ちてしまっている要素もあります。


例えば、

「①音符→②音名(読む)」

「②音名→③鍵盤(探す)」

と分けて指導するのみでは、①音符と③鍵盤の関係性を実感する機会がなくなってしまいます。「楽譜を読んで弾く」ことは、最終的には「パッと楽譜を見て弾ける」こと、つまり①②③の要素がほとんど同時に処理されるようなことを目指していきたいので、①と③の関係性を知ることも非常に重要です。楽譜の見た目(①)と、鍵盤の配置(③)についても、別で指導を行うのがよさそうです。


また、これまで書いてきたような

①音符→②音名→③鍵盤

というプロセスの結果として「音」という実際の物理現象がフィードバックされることも忘れてはならないことです。①②③の情報処理にばかり目を向けていると、例えば「楽譜を読んで弾けるけど音は聴けていない」なんてことにもなりかねません。

あくまで「音楽」を楽しむことを考えると、「どんな音が鳴っているのか」聴けることや「どんな音が鳴るのだろうか」とイメージできることは、まず大前提として必要なことだと思います。

①②③の情報処理の練習は、あくまで「楽譜を読んで弾く」ための練習であって、その結果としての「音」について感じ、味わい、考えることも忘れてはならないことだと思います。



まとめ


今回は「楽譜を読んで弾く」ことを子供にレッスンする際のアプローチの一例をご紹介しました。このアプローチは、Daily Musicの10分レッスンでも実際に取り入れています。

これは子供に限らずですが、何かに取り組むためにはその人にとって適切なハードルを用意することが必要だと考えています。今回ご紹介したこともほんの一例で、レッスンの数だけ、その人に合ったレッスンの方法を日々試行錯誤しています。今後もレッスンの中で感じたことなど書いていけたらと思います。


最後までお読みくださりありがとうございました!

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