
Daily Music 講師の柴垣です。クラシックを主に担当しています。
ピアノを弾いていると「難しくて弾けない」という箇所がどうしても出てきます。そういうところを必死になって練習しても、やればやるほど弾き方がわからなくなったりすることがありますよね。わかります。
そんな「難しくて弾けない」部分に出くわした時にどのように練習が効果的なのか、レッスンでお伝えしていること(そして普段から私自身も取り入れていること!)を今回はご紹介できたらと思います。
難しいところを練習する時に避けたいこと
効果的な練習をご紹介する前にまず、「こんな練習は避けた方が良い!」と思うことを紹介しましょう。それは
「うまく弾けないまま練習し続けること」
です。
例えば、「7小節目4拍目の左手と右手のタイミングが合わない」ことに難しさを感じているAさんがいるとしましょう。そんな時に、1小節目の頭からインテンポで何度練習しても、恐らくうまくいきません。むしろどんどん弾き方がわからなくなっていくなんてこともあるのです。ではこのような時、どんな練習をすることが効果的なのでしょうか。
難しさをはっきり理解すること
弾けない場所がでてきたときにまずするべきことは「なにが、どう難しいのか」ということをはっきりと理解することです。
難しい箇所が出てきた時、はじめは漠然と「むずっ!」と感じると思います。その「むすっ!」を克服するためには、まずその「むずっ!」をより詳細に分析することが必要です。
例えば
「左手が難しい?右手が難しい?」
「両手だと難しい?それとも片手でも難しい?」
「どこから弾いたら弾けて、どこから弾いたら難しい?」
など、いろいろな視点から「自分にとってどこがどんなふうに難しいのか」を分析してみましょう。
(先ほどのAさんの例に当てはめると「7小節目4拍目の左手と右手のタイミングが合わない」ということをまずはっきり理解することが必要だということですね!)
跳べるハードルから始めること
自分にとって「なにが、どうむずかしいのか」ということが明確にわかったら、次にすることは「このやり方だったらできる」というところまでハードルを下げることです。
「できることを練習しても意味がないじゃないか」と感じる方もいるかもしれません。しかし、ハードルを上げていくためにはまず「自分の跳べるハードルはどこなのか」ということをちゃんと知っておくことが重要です。
ではハードルの調整はどのようにするのがよいのでしょうか。よくある調整方法は以下の二つかと思います。
1.部分的に取り出す
2.テンポを落とす
この1.2を使って具体的にどのようにハードル調整をするのか、「7小節目4拍目の左手と右手のタイミングが合わない」Aさんの例で考えてみます。
「7小節目の頭から両手で弾いてみよう」
↓
できなかった
「ゆっくりだったらどうかな?」
↓
できなかった
「じゃあ4拍目だけやってみよう」
↓
できた!!
このような場合、Aさんにとっての跳べるハードルは「4拍目だけ弾く」です。
「跳べるハードル」と「跳べないハードル」を比べる
自分にとって跳べるハードルがわかったら、そこから少しずつハードルを上げて行くのですが、まだ焦ってはいけません。この時に大切なことは「跳べるハードルと跳べないハードルを比べながら」進めることです。
なぜこれが大切なのかというと、「跳べるハードル」と「跳べないハードル」の比較をすることで「できる時とできない時の違い」、言い換えれば「できない原因」がわかってくるからです。この原因を踏まえた上で練習をすると、次第に「跳べないハードル」の時の感覚が「跳べるハードル」の感覚に近づいてきます。その結果、「跳べるハードル」が一段上がります。
Aさんで例えてみます。「4拍目だけ弾く」というハードルからスタートすることにしました。次にハードルを一段上げて、「3、4拍目」を続けて弾いてみますがうまく弾けなかったとしましょう。
この場合に大切なことは「3、4拍目を弾き続ける」ことではありません。「4拍目」を弾くときと「3、4拍目」を弾く時の感覚を比べることです。できるときとできないときの感覚の違いを探っていき、「3、4拍目」の感覚を「4拍目だけ」の感覚に近づけていくことが重要です。
同じ感覚で弾けるようになってきたら、そこではじめてもう一段ハードルを上げてみて(7小節目1拍目から弾くなど)、また同じように、跳べるハードルと跳べないハードルを見比べていきます。
このように「跳べるハードルと跳べないハードルを比べながら練習する」ことを通して、しっかり原因を解消しながらハードルを上げていきましょう。そうすると、「なぜか弾けない」を残すことなく最終的に越えたいハードルを越えることができます。
まとめ
今回は、難しくてうまく弾けない場所の練習方法について考えてみました。
この練習プロセスはやればやるほど速くなっていきますし、一度越えたハードルは他の箇所でも応用できることが多いので、上達のスピードもグンと上がります。
とはいえ、最初から1人で行うのは難しいかもしれません。慣れるまではレッスンなどで先生と一緒に練習をしてみるのも一つの手です。10分レッスンでは「一緒に練習する」ようなことも行なっています。
今回紹介した練習を通して、「できなかったことができるようになる」ことをたくさん味わってください。そして、楽しくピアノの練習をしてもらえたら嬉しいです。
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