クラシックのオンラインレッスン
- 山田亮
- 4月20日
- 読了時間: 4分

Daily music 講師の柴垣健一です。クラシックを主に担当しています。
当教室を含め、ピアノレッスンをオンラインで行う教室が近年増えてきました。ただ一方で、「クラシックピアノ」に限ると、ジャズやポップスに比べてオンラインでのレッスンが浸透しきっていないような印象を受けます。
今回はクラシックピアノのオンラインレッスンについて、実際にレッスンを行っている講師の視点からお話してみたいと思います。
オンラインレッスンの音質について
ジャズやポップスに比べてクラシックのオンラインレッスンが広まりにくい理由として、オンラインでは細かい「音色」や「ニュアンス」が伝わりきらないのではという懸念があると思います。
これは、ある意味でその通りです。生の音を聴くという体験と、デジタルに変換された音をスピーカー越しに聴くという体験は、やはり違うものです。
名ピアニストの演奏を、ホールで聴くよりも zoom で聴くほうが豊かに感じられる、という人はほとんどいないと思います。
ただこれは、音楽を「鑑賞する」という行為においてデジタルでは抜け落ちてしまうものがあるということです。それだけで「オンラインでピアノのレッスンが成立しない」と判断してしまうのは、少しもったいないように思います。
対面、オンライン問わずレッスンで大切なこと
上記のように、生の音でないと伝わらない要素があるのは事実です。それでも、私は「オンラインのレッスンはとても有意義だ」と感じています。
私自身、オンラインと対面の両方でレッスンを行っていますが、どちらにも共通して大切なのは、
「演奏を聴いて、その演奏に至る背景を見極めること」
だと思っています。演奏者の演奏を聴き、「なぜそのような演奏になっているのか」を考えることです。
たとえば、あるフレーズでつっかえてしまうとき、講師としては「つっかえていること」だけでなく、「なぜそこでつっかえるのか」を見極める必要があります。その要因が指づかいなのか、フレーズの感じ方なのか、あるいは体のどの部分をどう使っているか、といったことを把握して、それを的確に伝える。これがレッスンの中心だと私は感じています。
オンラインでも「演奏の背景」は伝わるのか
では、オンラインのレッスンで、そうした「演奏の背景」を見極めることはできるのでしょうか。
正直に言えば、私自身も最初は半信半疑でした。コロナ禍で初めてオンラインレッスンを行うまでは、音の微細な違いが聞き取りにくいことがネックになるのでは、と思っていました。
ところが実際に始めてみると、不思議なほど演奏者の背景や考えが伝わってくることに気づきました。確かに、ホールで聴くような繊細な響きや音色の変化を、マイクとスピーカーで完全に再現することはできません。でも、演奏者のフレージング、体の動き、リズムの取り方など、「その人がどんなふうに音楽を捉えているか」といったことは、画面越しでもはっきり伝わってくるのです。
これは自分にとっても大きな発見でしたが、よく考えてみれば、私たちは普段からCDやストリーミング、YouTubeなどを通して、デジタル音源からたくさんのことを学んでいます。そう考えると、オンラインレッスンでも十分に「伝わる」「受け取れる」というのは、ある意味で自然なことだったのかもしれません。こうした経験を重ねるなかで、私は「レッスンという行為はオンラインでも十二分に成立する」と確信を持つようになりました。
オンラインだからこそできること
ここまでは「本来あるべき音が伝わらないかもしれない」ということは実際さほど気にならないというお話してきましたが、ここで改めて「オンラインならではの大きなメリット」にも触れておきたいと思います。
それは、場所に縛られずにレッスンを受けられるという点です。これは何にも代えがたいオンラインの強みです。
遠方に住んでいる方でも自宅から気軽にレッスンを受けることができますし、移動にかかる時間や労力が不要なため、定期的にレッスンを続けやすいという利点もあります。
当教室でも海外から受講される方が多くいらっしゃいます。私は東京に住んでいますが、オンラインを通じて国内外さまざまな地域の方とつながることができ、対面だけでは絶対に出会えなかった生徒さんとのやり取りができていることに、オンラインレッスンの大きな意味を感じています。
まとめ
ここまで、クラシックピアノでもオンラインレッスンは十分に成立するということをお伝えしてきました。
デジタルを介することによる制限がまったくないわけではありませんが、実際のレッスンではそれが気になる場面はごくわずかです。
それ以上に、「どこにいても、安心して、継続的にレッスンを受けられる」というメリットの方が、はるかに大きいと感じています。
もし、オンラインでのレッスンに興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度体験レッスンを受けてみてください。
きっと想像以上に、多くのことが伝わり、受け取れることに気づいていただけるはずです。
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